わかやまぼくすい
1885年ー1928年(明治18年ー昭和3年)
宮崎東臼杵群東郷村(現・日向市)生。静岡県沼津市で死去。
幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
山ねむる山のふもとに海ねむるかなしき春の国を旅ゆく
われ歌をうたへりけふも故わかぬかなしみどもにうち追はれつつ
とこしへに解けぬひとつの不可思議の生きてうごくと自らをおもふ
父の髪母の髪みな白み来ぬ子はまた遠く旅をおもへる
朝地震す空はかすかに嵐して一山白きやまざくらばな
この手紙赤き切手をはるにさへこころときめく哀しきゆふべ
しづやかに大天地に傾きて命かなしき秋は来にけり
春白昼ここの港に寄りもせず岬を過ぎて行く船のあり
おもひやるかのうす青き峡のおくにわれのうまれし朝のさびしさ
摘草のにほひ残れるゆびさきをあらひて居れば野に月の出づ
白玉の歯に染みとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ
秋かぜや日本の国の稲の酒のあぢはひ日にまさり来れ
かんがへて飲みはじめたる一合の二合の酒の夏のゆふぐれ
さうだ、あんまり自分のことばかり考へてゐた、四辺は洞のやうに暗い
朝酒はやめむ昼ざけせんもなしゆふがたばかり少し飲ましめ
うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山ざくら花
足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる
酒ほしさまぎらはすとて庭に出でつ庭草をぬくこの庭草を
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